アガペーの愛とエロスの愛

 「アガペーの愛」と「エロスの愛」というのは、愛についての有名な分類ですが、それに対する分析となるべく正確な理解について考えてみます。
 アガペーの愛というものに対してあまりこの呼び名自体になじみのない人が多いと思いますが、もともとはキリスト教から来た概念であると思います。新約聖書の中にイエス・キリストが語ったたとえ話が書かれているのですが、その中でも「放蕩息子の話」がまさにアガペーの愛に属するものです。ある主人(父親)から分けて貰った財産を放蕩(飲めや歌えやなどしてお金を使うこと)して使い果たした息子が、その行為を反省して僕(召使)としてでもいいので、もう一度父親の元に戻ろうと思って家に帰ったときに、その父親は無条件に息子を許し、最高のもてなしをした、という感じの話です。
 アガペーの愛は強者から弱者、たとえばイエス・キリスト(神)から罪びと(人)とか、親から子、お金持ちから貧しい人など、上から下に無条件に流れる愛のことを表現しています。
 これに対して「エロスの愛」にはさまざまな概念の混乱があると思います。エロスの愛というと単純にエロい愛として男女の肉体的な愛をイメージする人が多いと思いますが、これもキリスト教倫理学という枠組みの中で考えてみると、ニーグレンという神学者は少し違う観点からエロスの愛について説明しています。
 ニーグレンによるとエロスの愛とは、理想とか、より高次なものに対する憧れとか、完璧なものに対する熱望など、人間のより高次なものに対する愛情や憧れや渇望といった感じで表現されます。ちょっと分かりにくい話だと思うのですが、たとえば私たちがものすごい美人や美男子を見たときにその人に対して愛着や愛情を感じると思うのですが、その愛情は自分たちの中にある理想やあこがれのまさに現れであるわけで、エロス的な愛であると分析できるわけです。そういう意味で男女間の肉体的な愛というのも、本来は愛によってお互いを高めより高次な存在にするということでエロスの愛と呼ばれていたと思うのですが、そういう本来的な意味が失われて今のような形になっているのだと思います。
 さて、ここから結論になりますが、アガペーの愛は上からの一方的な愛だと言えますが、それはあるいみ自己満足に陥りやすい愛ではないかと思います。貧しい人に施しをあげた、というときに、その行為自体はすばらしいですが、一歩間違うと優越感とか傲慢さなどにつながる危険性があるということです。それではどうすれば良いかというと、アガペーの愛の中にエロスの愛をも融合する努力をすることによって解決できると思います。エロスの愛は理想を求める愛であり、愛せるものを愛する愛であると先ほど話しましたが、私たちの接する人たちがどんなに自分と違っていても、合わないと思っても、あるときには価値がないように感じるときがあるとしても、その人の中には必ず自分にとって学ぶことができる何かがあるはずだ、と信じて、常に尊敬し尊重する心を忘れないということが大切だと感じます。つまりアガペーの愛は上から下という一方通行的なものですが、そこにエロス的な要素が加わることによって上下という立体的な複雑さが加わって、心の刺激や喜びがより一層増すということです。
 アガペーの愛を実践するということは特に難しいと感じることではありますが、私たちの人間性を表現する上で、愛は一番重要なポイントであることは間違いないと思いますので、時間をかけて少しづつ成長をめざすと良いと思います。  


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Author:philosopher777
人と人とを結びつけるものはなんだろう?と考え続けた答えが、「愛」かなということでした。時代を越えて変わらない真実を、新しい角度から見つめていきます。
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